霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

ペットのために改葬も ペットも家族の時代到来

2012年01月27日

 先日、こんな事例に出会いました。すでに千葉県の民間霊園に墓地を持つAさんからの相談です。お墓を引っ越したいという希望。普通、お墓の引越しの「改葬」は、田舎から先祖のお墓を移転することが多いのですが、Aさんのお墓は、同じ市内の別の霊園への移転でした。
 Aさんは、家族とも思うペットの愛犬の死を悼み、ぜひ遺骨を自分の家のお墓に埋葬したいと考えたのでした。民間霊園の経営主体の○○寺のご住職の奥様に相談した所、「人間と犬とは行く所が違う。絶対だめ。」と、ことわられました。確かに、仏教的世界観では、六道輪廻であれば、奥様の言う通りです。人間は、生きている間に悟りをひらき、仏の弟子となれば、死後「浄土」へ旅立ち、生まれ変わりのカルマから逃れられ、「成仏」するのですから。
 しかし、Aさんは、同市にある別の民間霊園に家族とも思うペットと一緒に入れることを選択して、墓地を返還(更地にするのにも費用がかかり、返還した墓地の永代使用料は戻りません。)し、新しい霊園の永代使用料と、外柵工事代と費用負担もいとわず、「改葬」したのです。(墓石は、持ち込めました。)
 公営霊園や、民間霊園では、届出義務のある遺骨は人間のものであり、ペットの遺骨は遺品・副葬品扱いで、記載されません。そのため、時にはペットの遺骨を埋葬している人もいます。使用規則に具体的に「禁止」されていないものも多いです。しかし、前述のように、管理者の判断も大切ですので、トラブルを起こさない配慮が必要と言えます。
 今、ペットと一緒に入れることを謳った民間霊園も話題を呼んでいます。少子・高齢社会の進行で、お墓の概念も様変わりして来た事例とも言えるエピソードでした。
 あなたは、ペットと一緒に眠りたいですか?

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長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子