霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

"墓じまい"の前に墓活用を!

2010年10月31日

 先日、ある新聞の記事で「墓じまい」「墓しまつ」という言葉を知って驚いた。自分の代で、お墓をおしまいにすることだと言う。お墓の跡取りが心配で、自分の代で何んとかしなければということなのだろう。戦後、核家族化が進行して来た。核家族二世代目も生まれて来ている。中には、三代目もいる。

 さて、この核家族の限界が見えて来ているのかもしれない。直系血族では、少子化が起きれば、家族墓はすぐに無縁化する可能性が出てくる。これをふせぐには、家族の範囲を少し広げてみることはどうだろう。江戸時代の知恵である。しかし、21世紀の現代「養子縁組」までする必要性は、重荷と考えられやすい。

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 「養子縁組」などしなくても、姓も変えずに、婿や姪がお墓を継げる。東京都営霊園では、使用者に子供がなかったり、独身者であったりした時、規則内の書類をきちんと揃えれば、血族6親等、配偶者・姻族は3親等まで承継出来るのだ。墓不足で困った時などは、ぜひ活用したい祭祀財産の承継なのだ。無税で相続できる、活用できる財産だ。承継には、手数料1600円+郵送料420円がかかるだけである。また、管理料は普通墓地なら、600円/㎡/年(一般墓地22年申し込み実績)と安価である。

 一度も顔を見たこともない先祖、親戚と考えるかもしれないが、血縁であることには変わりない。家族の歴史を、墓石や墓誌から調べられるし、それもまた楽しい作業となるはずである。

 「家名」が変われば、墓石を新しく建て替えしても良いし、家名の彫り変え(表面を削って磨き直しをして彫り変える)リフォームも出来るし、棹石(上部の墓石)を共石で建て変えても良い。デザインも自由だ。

 寺院墓地や民間霊園の場合も、使用規則や工事規則範囲で相談することも出来る。墓じまいする前に、"墓の活用"を積極的に行い、「生命の大切さ」「家族のあたたかさ」を感じられる、心の財産を受け継ぎたいものだ。

profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子