霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

直葬ってどんなこと?

2011年12月15日

 このごろよく耳にする直葬とはどんなことでしょうか?現在東京で行われる葬儀のうち、約3割が直葬と言われています。「直葬」とは、昭和30-40年代に、「直送」と言われたのがはじめだと、葬儀業界に詳しい方から教えていただきました。警察物件といわれる、身元不明者や、自殺などのご遺体を、直接火葬場に送るという意味があったそうです。10年前ぐらいから、転じて、現在は病院、介護施設などで亡くなられた故人を自宅に帰さず、直接火葬場に送り火葬することを指すようになりました。実に、新しい言い方だそうです。
 文字に葬儀の「葬」が含まれているので、葬儀と思われやすいのですが、遺体の処理になりやすい点を注意しないと、ただ火葬しただけに終わってしまいます。遺体は、現在の法律で24時間は蘇生する可能性があるため、火葬できません。火葬場の冷蔵施設で預かっていただくことになります。その施設が充実し、費用負担がいくらなのかにも関心を寄せてください。また、火葬場内に簡単な葬儀施設があるか、炉前などで葬儀ができるかなどについても、きちんと考えておくべきです。「直葬」が、単なる遺体処理に終わらないためには、いくつかのポイントがあります。この4ポイントに気を付けて失敗しない事です。
① 病院からの遺体搬送を、どうするか。葬儀社に頼むことが普通ですが、火葬の順番を予約してもらい、火葬場直接搬送をお願いする。遺体保管を葬儀社にお願いできるところもあるので、その費用負担をきちんと交渉する。(今注目されているラステル久保山は、ラストホテルという意味で、遺体を保管し、いつでも面会できるシステムです。公営の場合、一度遺体を預けると火葬当日までよほどのことがない限り、面会できないことが当たり前の状態があるので註する必要があります。)納棺して運ばれることもあります。
② 宗教者を呼ぶかどうかを、きちんと家族で相談すること。火葬後に、菩提寺に連絡し、寺院墓地に埋葬しようとしてトラブルが生じた事例があります。田舎にある菩提寺に一報する事が大事です。また、菩提寺がないときには、葬儀社等でお坊さんをお願いして炉前だけのお経を頼み、戒名をつけていただくこともできますので、相談することが大切です。
③ 宗教者を全く呼ばずに、家族だけでお別れしたのち、火葬する際にも、ぜひ棺の上に花束を手向ける配慮が必要です。人は、ものではありません。故人の人生に対してのお見送りを丁重にして差し上げてください。
④ 「直葬」をうたった安価な葬儀が、インターネット上に、多くの情報が氾濫しています。しかし、安さでお願いして失敗するケースもあります。遺体搬送車が、単なるライトバンであり、ストレッチャーなしに遺体をぶつけて運び、業者の自宅の車庫が遺体安置所であるなど、クオリティの保証がない状態ですので、自己防衛しないといけません。

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profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子